「ダメ、でしょうか?」
だんだん下にさがってしまった視線をオズオズ上げると、そこにはポケットに手を突っ込む彼の姿が映る。
「携帯出して」
「へ?」
「“へ”じゃなくて、携帯」
「あ、はい」
言われるがままに私もポケットに手を突っ込んで、携帯を取り出す。
「赤外線できる?」
「出来ません」
「は?」
「いや、携帯とか機械類全般が苦手で、よくわかんなくて」
「……」
「すいません」
だって仕方がないじゃん!!
だからノートに書いてって言ったのに!!
逆ギレとも思える言葉を思い浮かべる私の目の前で、彼が小さく溜め息を吐くから、なんかものすごく嫌な気分になった。
「……」
さっき払ってくれたバス代もいらないって言ったし、そんなの意にそぐわないけど、もうこれ以上関わらない方がお互いの為かもしれないってそう思って。
“もういいです”
そんな言葉が、口を吐いて出そうになった。
だけど、その言葉が外の空気に触れる事はなくて――……。

