それから、どれくらいそうしてたんだろう。
わからないけど、ザーザーとスゴイ音を立てていた雨が、シトシトという優しい雨に変わった頃。
ウサギさんは、腕に込めていた力をゆっくりと抜いて、私をそこから静かに解放した。
「……」
目の前にいるのは、いつも通りカワイイを通り越して、怪しいとさえ思えるほどの笑顔を浮かべたウサギさん。
いつも通り、何も変わらないはずなのに……。
さっき、自分のことを“俺”と言ったウサギさん。
――だからかな?
「ウサギさんが彼氏だったらよかったのに……」
こんなバカげた、迷惑なことを口にしてしまったのは。
“……”
「……」
困惑しているのか、なんなのか。
とにかく外身の表情が変わらないから、感情を読み取れないったらない。
黙ったままのウサギさんと、何らかの反応を待つ私。
それに根負けしたのか、ウサギさんはおもむろに、一度置いたペンを持ち直した。

