「ウサギさん、先に行っていいですよ」
差し出された筆談用ノートを受け取りながらそう言うと、ウサギさんはその動きを止めて首を傾げた。
「もうちょっとここにいます」
“……”
「次の飛行機、見てから帰ります」
膝を抱えて、空を見上げてそう言うと、ウサギさんは私の手から、ノートをスッと抜き取った。
“もうすぐジャンボが飛び立ちますよ”
「ジャンボ?」
“イギリス行きの、大きい飛行機”
それだけ言うと、また私の隣にストンと座る。
「飛び立つ飛行機の時間までわかるなんて、すごいですね」
“別にオタクじゃないですよ?”
「あははっ!」
“ただ、”
「……」
“この場所が大好きなんです”
返されたノートに書かれた、その言葉。
それはページの真ん中あたりに、相変わらずキレイな文字で書かれていて。
“ん?”
「いえ、何でもないです!」
そのたった一言に、胸がトクンと音を立てた。

