腕の中から解放されて、少し気恥ずかしい状態のまま壁にもたれかかって並んで座って、夏希君は、ポツリポツリと、この1ヶ月にあった事を話し始めた。
私をバイト先で見かけなくなって、心配で佐野さんにどうしたのか聞いた事とか、その間に自分の野球の調子が悪くなって、毎日居残り練習をしないといけなくなった事とか。
「今日、試合前にハナちゃんに逢えてよかった」
「なんで?」
「今日の試合でも調子悪かったら、スタメン落ちが決定するとこだったんですよ」
「はっ!?
驚くべき事を飄々と言ってのけた夏希君に、慌てて視線を向けたら、何故かにっこり笑われる。
もうなんか、意味がわからない。
だけど、顔を顰めた私の頭を、夏希君がポンポン撫でて……
「甲子園、観に来て」
「……」
「やっぱ、ヘナチョコな俺には、お守りが必要っぽい」
そんな事を言うから、私はつい笑ってしまったんだ。

