“カキィーン――……!! キーーン――……!!”

あ、あの人すごーい。

頬杖を付きながら、その様子をボーっと眺めている私が居るのは、金属音が響く空間からガラス一枚隔てた所にある、小さな事務室の中。

さっきまで一緒にいた佐野さんは、オートテニスの機械の調整に行ってしまった。


「……」

野球の中継が流れる、もうすぐ映らなくなってしまう、四角くて分厚い古いテレビの更に上。

時計を見上げれば、その針はもうすぐ二十二時を指そうとしていた。


うーん……。

佐野さん、時間までに戻ってくるかな?

でも私がここにいたら、佐野さんに迷惑がかかっちゃうし。

高校生のバイトは、法律で二十二時までと決められている。

少し悩んだ末、私は佐野さんが戻り次第帰れるように、机の上に広げていた宿題のノートをパタパタ閉じて、それらをカバンにしまい始めた。