「じゃ、忘れないうちに渡しておかなきゃ」

「??」

僕は合鍵を瑠璃ちゃんに渡した。


「オートロックだから出かける分には必要ないけど、帰った時に困るだろ?」


彼女の帰る場所は『ここ』なんだと云うメッセージを込めて。


「昼食の後に、携帯を見に行こうと思ってる。いいよね?」

「はい・・・」


はにかむ仕草も煽情的だなんて…。
きっと瑠璃ちゃんは分かっちゃいない。
無意識だから尚更タチが悪いんだけどなぁ。


フレンチトーストで満たされた胃袋と共に、僕は会社へ向かった。