「別にそこまで面倒みてやらなくたっていいんじゃねーの?」

そうだよね。
私もそう思う。

「ここで仏心を起こしたら、お前は一生『緋笙流』から逃がれられないぞ?」

確かにそんな気もする。

でも・・・

泰如さんと結婚するために始めた華道。
すぐに結婚するはずだったから就職活動すらしなかった。
だから今は…家事手伝い。要するに無職。

いつまでも親に甘えてばかりもいられないでしょ。

かと言って、自分に何が出来る?

そう考えると私には華道しかない。
お茶も着付けも嗜む程度で、指導する程の力は無い。

「結局、私にはお花しか無いんだよ…。
何の取柄も無いの。
このまま親の脛(すね)をかじってばかりもいられないでしょ?」

「だからって…。
他にやりたい事が見つかるかもしれないだろう?
散々稽古漬けの毎日だったんだ。
ちょっとぐらい休んだって罰は当たらないぞ?
それに、親だって…ようやくお前と一緒に過ごせる時間が出来て喜んでるって」

「そうかな…?」

「そうだよ!」