「よぉ、元気にしてたか?」

声の主は史也兄さん。
久しぶりに実家に帰って来たのだ。

「浮かない顔してるな? 家元に何言われたんだ?」

そう、兄さんはいつだって私を気に掛けてくれる。

「嫌なら断っていいんだぞ?
お前は周りの空気を読み過ぎて、自分の気持ちを後回しにするからな。
破談になった時点で、立場はこっちが上だ」

うん。
なんとなくは分かってるんだけど…。

「返事は待って貰ってるの。
でも、いつまでもずるずると引き延ばせないからね…」

私は家元に言われた事を兄さんに話した。