ジェフティ 約束

 少しすると女は何事もなかったかのように、すました顔で森から出てきた。ラルフが声をかけたのもさっぱり忘れているかのようだ。それも、手には大きなテルテオ猪を軽々と掴みあげている。
「なんだ、起きたのか」
 ――あんた、俺が起きなかったら、まだこの辺りを迷ってただろ。
 とは思ったが口にはしない。
 女は何事もなかったような顔で、なおも手にしていた猪をちょっと持ち上げた。
「昼飯獲ってきた、腹が減っただろう」
 ――あんたは溯上(そじょう)してきたサケかなんかを捕まえるクマか!?
 と湧き上がってきた言葉も、謹んで口にはしないよう我慢をする。