ジェフティ 約束

 じりじりと、二人の距離は接近していく。剣の構えは二人とも同じ。体の脇に引き寄せ、剣先を天へと向けている。
 いつしか国王軍も村人も誰一人、口を開く者はいなくなった。誰もが、二人の成り行きを固唾を飲んで見守る。
 静まりかえった朝の、肺を絞めつける空気が、空気の冷たさゆえか、はたまたこの場の張り詰めた緊張感ゆえかは、説明するまでもない。
「こらえる様になったな、アスベリア」
 ノリスは瞬きもせず、アスベリアのキャメルブラウンの瞳を凝視している。
「さあ、それはどうかな」
 最初に動いたのはアスベリアだった。一歩前に踏み込み間合いを詰めると、身を沈めて剣を振り上げた。うなりをあげるほどのスピードで、剣先がノリスに迫る。
 周囲を取り囲んでいた誰もが、体に力が入り両手を握り締めて唸った。どよめきが巨大な空気の塊となって、二人に重くのしかかってきた。