ジェフティ 約束

 村の入り口からまたも男の声が聞こえてくる。
「この地に匿いしディルーベス一族の、神聖なる巫女姫を国王陛下の元へ御連れする。抵抗せず速やかに差し出せ。さもなくば、この村を焼き尽くす!」
 父の姿を振り切るように治療院へと駆け出したラルフの背中に、朗々とした父の声が追いかけてくる。
「アスベリア=ベルンと申すもの。私はこの村の長ダルク=ペルノーズ。このような無礼な出迎え、ノベリア国王ザムラス陛下の命とはとても思えませぬ!
 巫女姫様とその母上が旅の途中、急病のため、この地に立ち寄られ静養されていただけ。それを心から心配し、熱心に看病していた村人に、矢を向けるとは何事か!」
 ラルフは治療院のドアをすばやく開け中に飛び込んだ。
「父さんが二人を連れて逃げろって」
 ラルフの姿を見るなりジェイが駆け寄ってくる。