ラルフは眠る少女の横に座り、シモーヌに膏を塗って治療してもらいながら、横目で少女の寝顔を見た。
「婆様、この子の額って……」
少女の前髪の間から、額に描かれている模様が見えた。風のように渦を巻くその中心に、大切に抱かれている宝石のような形をした青紫の印。
「ディルーベスの巫女の印さ、ティリシャだね」
シモーヌはこともなげにさらりと言う。しかし、ラルフは伝説にしか登場しないような、自分とは別世界にいると思っていた人に出会えたことに驚いていた。それこそ、物語の中だけに存在していると思っていた姿が、すぐ横で息をしていることに、ラルフはとても尊いものを感じとった。
――この子が、巫女……。
「これが、ティリシャ。神様の付き人……」
小さい頃、眠る前に子守唄のように聞かされていた、ディルーベスの伝説。全知全能の神に仕える巫女一族ディルーベスは、神の言葉を聞き地上の人間たちを安息の地へと導く尊き神の使い。
「婆様、この子の額って……」
少女の前髪の間から、額に描かれている模様が見えた。風のように渦を巻くその中心に、大切に抱かれている宝石のような形をした青紫の印。
「ディルーベスの巫女の印さ、ティリシャだね」
シモーヌはこともなげにさらりと言う。しかし、ラルフは伝説にしか登場しないような、自分とは別世界にいると思っていた人に出会えたことに驚いていた。それこそ、物語の中だけに存在していると思っていた姿が、すぐ横で息をしていることに、ラルフはとても尊いものを感じとった。
――この子が、巫女……。
「これが、ティリシャ。神様の付き人……」
小さい頃、眠る前に子守唄のように聞かされていた、ディルーベスの伝説。全知全能の神に仕える巫女一族ディルーベスは、神の言葉を聞き地上の人間たちを安息の地へと導く尊き神の使い。
