ジェフティ 約束

 ラルフはシモーヌの治療院へ戻ると、暖炉に新しく薪をくべ湯を沸かし始めた。
 少女はラルフがノリスの所に行っている間に、暖かい布団へと移されていた。体が温まる薬草を煎じた湯に浸した布を首に巻いて、穏やかな表情で眠っていた。頬に赤みが差し、唇もピンク色に色づいている。寝顔を見つめ、ラルフは胸をなでおろした。
「どこも怪我はないみたい?」
 遠巻きに見ながらつぶやくラルフに、シモーヌは笑いをこらえながら言う。
「大丈夫だよ、ラルフ。お前が大切にここまで運んできたんだからね。それよりも、自分の額をなんとかおしよ。切れて血が出ているじゃないか。こっちにおいで、見てやるから」
 ラルフはシモーヌの言葉を聞き、自分の額に触れた。森の中で小枝に打たれたところが切れていたらしく、血が乾いてこびりついている。