ジェフティ 約束

 ノリスは、ラルフの父ダルクの歳の離れた実弟で、元はノベリアの英雄とまで謳われていた。国王直属の騎士団長を務め、二年前にこの村に戻ってくるまでは、戦場の鬼神と恐れられるほどの人物だったのだ。
 三年前、ノベリアの北の隣国コドリスがシンパに侵略を開始したとき、シンパの親戚国ノベリアもその戦争に加わった。その際には最前線に立ち、コドリス軍と戦ったのだという。
 ノベリア国王軍のノリス=ペルノーズという名は、コドリスや他の国々でも、軍人ならば知らないものはいないというほど勇名をとどろかせていた。長身で屈強な体に、テルテオの民の特徴であるオニキスブラックの髪に似合う、漆黒の鎧がなんとも恐ろしく映え、敵軍が彼のその姿を見ただけで逃げ出したという逸話も残っている。
 さらに、ノリスがいつも握っていた白銀の美しい姿の長剣。その装飾された美しい姿とは裏腹に、血を求める魔性の剣と噂され、ガウリアン鋼で打たれたその刃は暗闇でも青白く発光し、戦場では稲妻のように白く閃光を放っていたと、まるで伝説のごとくその雄姿は語られていた。