ジェフティ 約束

 テルテオの襲撃の場に自分がいたならと、自らを責めていた、そして謝っていたシェシル。なぜ、彷徨いの森にいたのか、その本当の理由。
 ジェフティを心から大切に思った、その感情を知った今のラルフだから、理解できたことなのかもしれない。十年以上もの月日を間離れ離れになりながら、たった二本一対の長剣のみで絆をつなぎとめていた二人。まるで自分のラピスラズリのピアスのようだ。

 でも、シェシルの元へはノリスではなくこの長剣だけが戻ってきた現実。
 ラルフの涙の溜まった目を見つめて、もう何も言うなというように、シェシルはほんの少し笑う。
「この剣がここにあるっていうことは、それがどういうことかわかっている」
 ふいっと顔を背けると、シェシルは浴槽に入って体を沈め、ざばざばと頭から湯をかけ始めた。
 流れ落ちる湯に、あふれ出る悲しみが混じっていることに気が付いたラルフは、そっと風呂場からでて、床に広げたままになっている荷物の傍らにしゃがみこんだ。シェシルはけしてノリスを憎んだのではなかったのだろう。自ら離れ離れになる道を選ばなくてはならなかった自分の運命に、憎しみを抱いたのではなかったか。