しかし、ラルフは今、この目の前で舞われている鎮魂の舞が、今までみたどの舞よりも想いのこもった心に残るものだった。
 なんだろう、この胸を打つ感情は。ラルフはシェシルの舞を見つめながら、胸が急に苦しくなるのを感じた。自分もこうなりたいという羨望、長剣をこんなに思い通りに扱えるなんてずるいと思う嫉妬心。
 いろいろなものが、綯(な)い交ぜになってラルフを包んだが、なぜかそのなかでも一番大きな感情は、シェシルから伝わってくる悲しみだったように思う。
 しかし、シェシルからほとばしった悲しみは、すぐにラルフへと向けられた微笑の奥へと隠されてしまった。もうそうなると、ラルフにはその原因が分かりようがない。