ジェフティ 約束

 ラルフは両手を握り締め、シェシルの背中に向かって口を開く。誰かに聞いてほしい、そんな衝動に駆られたのだ。
 もしかしたら、これから自分が歩むべき道は、けして間違ってはいないと、シェシルに言ってほしかったのかもしれない。もう守られているだけの存在ではなくなったと、自分自身に決意を表すために。
「大事な子だったんだ、ジェイは。幸せだったんだ、ほんの昨日まで。みんな幸せだったのに。あいつらさえこなければ!」
 ふつふつと怒りがわいてきて、行き場のない手が、足元の草をむしり始めていた。
 テルテオで匿っていたディルーベスの巫女姫のこと、その巫女姫ジェフティが自分の大切な女の子だということ。そして、村の焼き討ちの果てにジェイがノベリア軍に拉致されてしまったこと。ラルフはすべてをシェシルに話した。