「そうだのぞみ。お母さんクリスマスに展示会があるから、これからあまり帰って来れないと思うの」

「別にいつもの事だから気にしないよ」

「じゃあ家の事よろしくね」

そう言ってコーヒーを飲み干し、席を立った。


「……いってらっしゃい」

お母さんはあたしの見送りの言葉も聞かず、慌ただしく家を出て行った。





キッチンのテーブルには、いつもと同じサンドイッチが置いてあった。

お母さんは、毎朝これだけは作って家を出る。



てか唯一作れる物がサンドイッチって、どんな母親だよ。

家の外ではジュエリーなんか作ってるくせに。





お母さんはフリーのジュエリーデザイナー。

仕事内容はあたしにはよく分からないけど、展示会が近付くとしばらく家を空ける。

仕事モードの時のお母さんはいつも慌ただしいけど、よっぽどこの仕事が好きらしかった。


きっとお父さんを単身赴任させなかったのは、忙しいお母さんと少しでも顔を合わせる為だったんじゃないかな。


まぁ、今じゃ何の意味も無いけど。

取り敢えずあたしはしばらく一人らしい。



あたしはサンドイッチを頬張った。