教室に戻ると、本令がなる二分前だった。 私が窓側の席に着くと、廊下側の席のヒカルがこちらを向く。 「ヒナ」 口パクで私の名前を呼ぶヒカル。 そんな姿が愛しくて胸がドキッと高鳴るが、それとは、裏腹にヒカルの頭上には“残り二十九日”の文字。 私は小さく手を振り、前を向いた。 ヒカルの姿を直視し過ぎると──また涙が溢れ出そうだから──。