犬と猫…ときどき、君



そんな手紙と共に――多分篠崎君によって運ばれた――“アレ”が忍ばせてあるらしいカバンが、マコが寝るはずだったベッドの上に置いてあったのだ。


「はぁー……。もういいっすわ」

「え?」

溜め息を吐きながら、春希は頭を掻いて項垂れる。


「行くぞ」

「えっ!? ど、どこにっ!?」

「どこって……部屋戻る」

「……うちの?」

「自分の部屋に戻れと?」

「……」

「今から自分の部屋戻って、篠崎と椎名がヤッてる最中だったら、俺すげー気まずいんですけど」

「ぅ……」

それは確かに嫌すぎる。

だからと言って、さっきの事もあったし……。


どうしよう、どうしよう。


一人アワアワする私。

そんな私を尻目に、スタスタと歩き出した春希は、その場から動けないでいる私に気がついて振り返ると、

「大丈夫だから」

「え?」

「俺は疲れてるんだよ」

「……」

少し面倒くさそうに、そんな言葉を口にした。


そっか。そうだよね。


だけど……。

安堵と、ちょっと残念な気持ちでモヤっとする私に、

「六回も出来るかっつーの」

そんな、どう考えても見当違いな言葉を落とした。


「……」

「……」

――え?


「えっと……え?」

少し考え込みながら目を瞬かせる私が、ゆっくりと視線を上げると、目の前には片眉を上げて人を小馬鹿にしたような春希の顔。


「ばーか」

「はぁっ!?」

大声を上げた私を見て楽しそうに笑うと、私の手を取って、バンガローに向かってゆっくりと歩き出した。