犬と猫…ときどき、君


「つーか城戸!! 胡桃に手ぇ出してないってホント!?」

その問い掛けに、春希は横目で私をチラリと眺める。

「えっと……」

ああ、どうしよう。
視線が痛すぎる。

ご、ごめんなさい。
正直に話しすぎちゃって、ごめんなさい。

けれど春希は、心の中で平謝る私のハラハラを余所に、

「ホントですけど、何か?」

目の前にあるチップスを口に運びながら、平然とそんな言葉を口にした。


それを聞いて、これでもかという程目を大きくした女性陣が、また「ありえない!」だの「やっぱり○○○なんだ!」だの騒ぎ始めて、もう収拾がつかない。


「ちょっとっ!! もー……」

“ほっといてよ!”そう口にしようとした、その時。


「大丈夫。虎視耽々《こしたんたん》と狙ってるから」

「へっ!?」

私の耳に届いたのは、にっこりと笑った春希の言葉だった。


「……」

今、なんて言った?

……“虎視耽々と”?


「えぇっ!?」

「反応おそっ!!」


一瞬の思考停止後、やっと動き出した私を見て、春希は楽しそうに突っ込みを入れているけれど、私はそれどころじゃない。

いや、いいんだけど。

そういう事になるのは普通の事だと思うし、いいんだけど。

今まで、あまりそういう雰囲気を出さなかった春希だけに“虎視耽々と狙っていた”らしい事実を知って、思いっ切り動揺してしまう。


そんな私を“ん?”なんて、首を傾げながら覗き込んだ春希と、その様子に満足げに頷いて席を立つ女性陣……。


な、何これっ!?


「えっ!? ちょ、ちょっと! みんなどこ行くの!?」

慌てて声をかけた私に、満面の笑みを浮かべた彼女達は、

「ごゆるりと~☆」

絶対に、楽しんでいるだけだと思った。