犬と猫…ときどき、君



「城戸もよくこんなトコ見つけたよねー」

「ねー。ってか……暑っ!!」


むせ返る程の緑の匂いと、蝉の鳴き声。

ジメジメした梅雨が明け、初夏と言われる季節が過ぎ、やっと自由になった8月。


「確かに……。でも、晴れてよかったねー!」

「ホントだねー。いい天気!」

マコの言葉につられて視線を上に向けた私は、ゆっくりとその真っ青な空に両腕を伸ばし、深呼吸を一つした。


「……ヘソ出てんぞ」

「えっ!?」

「荷物、こんだけ?」

慌ててお腹に手を当てた私に呆れたような視線を送りながら、春希が黒い旅行カバンを差し出す。


「あぁ!! ごめんっ! 自分で運ぶから」

「いや。別に平気」

慌てて手を伸ばすと、それをヒョイッと遠ざけられてしまった。


「やだ城戸ぉー。胡桃には紳士なのねぇ」

「胡桃はその辺の女と違って、カバンが男前だから。軽々運べて大助かり」

「何それ」

「椎名の荷物見てみろよ」

その一言に、車から荷物を下ろしている男性陣に視線を向ける。


「あれ全部マコの?」

篠崎君と栗原の足元には、カラフルな、いかにも“マコの!!”という感じのカバンが三つ。


「そうそう! だって、女の子ってあんなもんでしょー?」

さも当然と言わんばかりに腰に手を当てるマコはまぁ、確かに女の子として色々気を遣っている様子ではあるけれど。


「おい。聞いたか、胡桃。お前、椎名に“女失格だ”って言われてるぞ」

「確かに聞き捨てならないけど、あんなに荷物が多くなる理由がわからない……」

唖然としながら、そんな言葉を口にした私を見て、春希は「お前らしい回答だなぁ」と、おかしそうに笑った。