犬と猫…ときどき、君


「“大学の援助で、旅行に行こう!”が真の目的」

「はっ!? 何それ!?」

そんなこと出来るの!?

素っ頓狂な声を上げる私の疑問に答えるように、篠崎君がニヤリと笑った。


「部費ほどは金貰えないけど、愛好会費もそれなりに出るのよん!」

「へっ!?」


要するに、話をまとめると……こうだ。


仲のいい仲間達と旅行に行きたい。でも、いかんせん学生の身で、お金がない。

だったら大学に出してもらえばいいじゃないか!

ただ、“旅行目的”となるとそれは難しいし「他の似た愛好会に入りなさい」となってしまう。


それだと、仲がいい人達だけで行けないから――カモフラージュの愛好会を作って、その会費で“合宿”と偽り、旅行に行っちまえと。


「それ……大丈夫なの?」

やっぱりマルチな臭いは強《あなが》ち間違えていなかったようで、つい小声になってしまう。


「さぁ? 大丈夫じゃねぇーの?」

私の心配を他所に、相変わらず飄々とそんな事を言ってのける春希は、人の気なんか知らずに楽しそうに笑っている。


「バレそうになったら、お前のピッチングでも見せとけ」

「……」

「“これが合宿の成果です!!”ってな」

「ちょっとー……。そんなのヤダよー」

不貞腐れながら見上げた、その瞳。


「合宿、きっと楽しいぞ?」

「……」

「行きたくない?」

本当に、春希はズルい。


そんな楽しそうな顔をされたら、

「……行きたい、けど」

「だろー? 星がキレイな所、探してやるよ」

行ってみたいなぁって、そう思うに決まっているのに。