髪の毛だって、化粧だってグチャグチャで、せっかくの美人が台無し。
それに、あんな大声まで上げて。
それでも、また逃げ出そうとする俺を、止めに来てくれた。
それだけで、十分。
俺が今までしてきたことを、胡桃が全部許してくれたんだって、十分過ぎるほど伝わった。
「胡桃。帰ろうか」
「え?」
「帰ろう」
左手にカバンを持って、右手で胡桃の手をギュッと握って。
ゆっくりと歩き出した俺に、胡桃は目を大きく見開く。
「い、いいの?」
「んー? 何が?」
「“何が”って、留学」
「あー……」
さて、何から話そうか。
きっとこの話をしたら、胡桃はまた激怒するかもしれないけれど、それでもいいや。
「取りあえず、飛行機キャンセルして、帰ったらゆっくり話すよ」
だから、一緒に帰ろう。

