何も言葉が出なかった。
言葉が出ないのに、何かをしゃべらないとと思うから、唇だけがパクパクと小さく動いて。
「城戸のこと?」
その言葉に、目を大きく見開く。
「あの……、違くて」
“違くて”、なに?
「あの、ね」
「うん」
――私は一体、いつまで嘘を吐き続けるの?
一度グッとしめつけられた心臓が、次の瞬間にはバクバクという大きな音を立て始める。
それは自分でも驚くくらい、大きな音で。
なにか言わないと……。
目の前で、私を真っ直ぐ見据えたままの今野先生が、口を開く様子はない。
きっと今野先生は“本当のこと”が知りたいだけで、怒っているわけじゃない。
それなのに、その瞳に責められている気がするのは、自分のこの後ろめたい気持ちのせいだ。
私がちゃんとしないから。
ちゃんと春希を忘れないから……。
“ごめんなさい”――何故か頭に浮かんだのはそんな言葉で、それを口にしようとした時だった。
「……んっ」
不意に重なった今野先生の唇に、その言葉は遮られて、
「まだ“リハビリ”がいるみたいだね」
離れた唇の隙間から紡がれたその声に、息を飲んだ。
「ちょっと、待って……!!」
「どうして?」
「だって……ぁっ」
「あいつのこと、全部忘れたいんでしょ?」
だって、こんなの――……。
「ね、お願いっ!! 待って……!!」
「大丈夫だよ。ちゃんと忘れさせてあげるから」
いつのも今野先生じゃない。

