「あとは本類をまとめて捨てて……。他に捨てんの何かあったかな」
九割方片付けの済んだ部屋で一息吐いた俺は、コーヒーでも淹れようかと、立ち上がってキッチンに向かう。
「はぁー……」
さっきからずっとこうだ。
家に帰ってから大量に吐き出された溜め息で、部屋の空気が重苦しい。
――やっぱり会うべきじゃなかった。
いや、意図的にそうしたワケじゃなくて、不可抗力だったんだけど。
車の査定に行った先のディーラーで、たまたま会ってしまった、胡桃と今野。
「おーい! 城戸ー!」
聞き覚えのある声に「今日出勤日じゃなかったか?」なんて、呑気な事を考えならが後ろを振り返ると、案の定、反対車線の歩道から声をかけたのは今野で。
子供みたいなその様子に一人で笑って、だけど次の瞬間、その隣にいる胡桃に息を飲んだ。
せっかく会わないように、連絡もしないようにしていたのに……。
あの病院に一人ぼっちにしてしまった事に、心配とか、申し訳ない気持ちはたくさんあったけど、これ以上俺が胡桃と関わる事で、彼女の周りに波風を立てるのが嫌だった。
それは、俺の気持ち的にもそうだったし、何よりも、松元サンが問題で。
俺のどこにそんなに執着するものがあるのかはさっぱりわからないけど、未だに【別れないから】なんてメールを送りつけてくる。
あれって最早、ストーカーの域だよな?
まぁ、俺は何をされたっていいんだけど、俺が下手に胡桃と連絡なんか取って、何かが起きて、それがどっかから漏れたらそれこそ最悪だから。
それに、胡桃だって……。
あいつから連絡をしてこないところをみると、胡桃もそれを望んでいるように思えた。
だから、未練も残さないように、スッパリ連絡も断ち切って、知らない間にいなくなろうなんて、ちょっと卑怯な事を考えていたのに。
どうして会っちゃうんだろうな。
食事をしていてもそうだし、今野が俺に声をかけた時、目に映る二人はやっぱり“彼氏と彼女”。
それを嬉しく思うのに、やっぱり心のどこかで何かが疼いて……。
「戻れるもんなら戻りてぇけど」なんて、本音まで零すとか。
「ホント……アホか」

