その日から、私の生活は少し忙しくなった。
お昼休みや仕事のあと、自分の休みの時間は、近くの病院を回ったり、大学の卒業生に会うことに費やした。
春希と話して、思ったんだ。
彼はやっぱり、病院にいたいんじゃないかって。
病院を辞めて留学する事が“逃げ”なのかもしれないと思ったけれど、もしかしたら“過去の清算”の為なのかもしれないとも思えた。
何故か今更、私を“好きだ”と言ってくれた春希の言葉が頭に何度も蘇る。
あの時ほど強い気持ちはなくなったのかもしれないけれど、もしもまだその気持ちを心のどこかに持ってくれているのだとしたら、春希は、それと同時に昔の自分を責めているんじゃないかと思った。
大学生だったあの頃。
お互い向き合うことから逃げてしまって、傷付け合って、少なくとも私は、春希の気持ちに気が付けなかった自分を今でも責め続けていて……。
もしも春希も同じだとしたら、居場所を見つけた私の気持ちを乱さないように、その場所を壊さないように、私の傍からいなくなろうとしているんじゃないかって思ったんだ。
そうだとしたら、私がしっかりすれば済むことなんじゃないのかな。
今更春希とどうこうなるわけにもいかないし、春希だってそれを望んでいない。
でも、私が中途半端にフラフラとしているから、春希は大好きなこの病院から離れないといけなくて……。
私が今野先生をきちんと見れば済むこと。
そうしたら春希は戻ってこられるのかもしれない。
――もちろんそれは、私の勝手な想像だけど……。
でも何度考えても、やっぱりこの病院を無くしたくないって自分自身でも思うから。
春希が“本当に留学がしたい”と言って、留学してしまっても構わない。
もしそうなったとしても、これは自分の為でもあるんだから、限界までは頑張ってみようと決めた。
とはいえ、自分なりに、ない頭で考えても、思いつくことなんて限られているんだけど……。
あの病院を再建するには、とにかく、なくなってしまう物と同等の機械が必要不可欠。
だけど一人の力で、それを一から集めることは難しい。
だから、同業の病院や先輩に電話をかけてアポを取って、会って事情を話して、使っていなかったり、余っている機材を貸してもらえないかと尋ねて回っていた。
だけどどうしてもいい返事はなかなかもらえずに、時間ばかりがどんどん過ぎいく……。
春希がいなくなる日まで、あと二週間。
それは、その日にこの病院がなくなるという事も意味していて。
せめて彼がいなくなるその日までに、何らかの結果を出したくて、私は焦っていた。

