犬と猫…ときどき、君



それから、査定が終わって一度持ち帰るらしい春希の車に乗って、適当な和食屋さんに入った私達は、昔と変わらない様子で席に着く。

だけど、やっぱりあの頃とは違うんだという事を思い知った。


別にそれでいいんだけど……。


春希の正面に今野先生が座って、私はその隣。


私と今野先生は付き合っているんだから、この席順が妥当なんだろうけど、何となく落ち着かない。

だってよく考えたら、こうして三人でご飯を食べるのって、沖縄で以来な気がする。


斜め向かいに座る春希は、変わらない笑顔を浮かべて、頬杖を付きながら今野先生と話をしていて、人の気なんて知らずに「酒飲みてーな」とか言っていて。

私は時々会話に混ざりながらも、春希のあの目を真っ直ぐに見るのが怖くて、終始俯き加減で過ごしていた。


それからしばらくして、食事が運ばれてきて、それを食べきって。


「さて、じゃー行きますか」

帰り道、きっとお店の出口で春希とは別れると思っていたのに……。


「悪い。ちょっと芹沢と話していい?」


お会計を終えて私に笑いかけた今野先生に、春希がそんな言葉をかけるから、せっかく落ち着いていた心臓がまた少しだけ鼓動を速め出す。


「あぁ、じゃー俺この先のスタバで何か飲んで待ってるから」

「え……」

「おー、悪いな」

「ちょっと」

目の前で繰り広げられる、いつも通り、何も様子の変わらない二人の会話に、私は呆気に取られて一人慌てる。


そんな私にフッと笑いかけた今野先生は、そのまま頭に手をポンポンと置いて、言っていた通り、真っ直ぐ行った先にあるスタバに向かって行ってしまった。


取り残された私は、その背中を目で追ったまま、春希を見ることさえ出来なくて。

「芹沢」

春希の声に、肩をビクッと震わせた。


「大丈夫か?」

「え?」

突然置かれた状況に、突然の主語のない言葉。

それに私が上手く対応できるはずもなくて、声が上ずる。


「ごめんな。病院、中途半端にして出ちゃって」

あぁ、そういう事ね。


「大丈夫だよ。転院の割り振りまでやってもらえたから、あとは残った子達を診るだけだったし」

春希は、きっと気付いている。

私が視線を上げられずにいる事に、気付いていると思う。


それでもやっぱり、その目を真っ直ぐ見る自信のない私は、俯いたまま小さく笑って、自分と彼との間に線を引くみたいに、自分に言い聞かせるように、ワザとその話題を口にする。


「引っ越しの準備は進んでる?」