犬と猫…ときどき、君



「今回ばかりはあのバカ女の意見に賛同するわ」


そんな暴言紛いのセリフを口にして、目の前で呆れたよう溜め息を吐いたマコは、どんどん豪華になっていくキャラ弁にフォークを突き刺した。


マコが言っている“バカ女”というのは松元さんの事で、“意見”というのは、私が今野先生を逃げ道にしているという事なんだけど……。


「城戸と全く連絡取ってないんだって?」

なんで知ってるのよ。

顔を顰めた私に鼻をフンッと鳴らしたマコは、再びお弁当に視線を戻して、それをガツガツと口に運んでいく。


「何かヘン!! 胡桃はこのままでいいわけ? 城戸のことも、病院のことも」


篠崎君に知らなかった事実をたくさん教えてもらって、松元さんと話をしたあの日。

マコは、篠崎君に呼び出されて、全ての事を知ったらしい。


その更に次の日には「あの女と何話したのよ!?」と、私に詰め寄って、それからは毎日、お昼の時間はこの話題。

はっきり言って、消化に悪くて仕方がない。


――だけど。


「城戸に悪いことしちゃったな……。まぁ、あいつにも悪いところは多々あるけど!!」

少し淋しそうに、そんな言葉を口にするから、何となくその話を打ち切る事が出来ないでいる。


「ホント、何とかならないかなぁ。三人娘だって私だって、正直、透の所じゃ働きにくいし」

マコのその気持ちはよく分かる。

この病院はアニテク同士の醜い争いもないし、本当に働きやすかったから……。

それは十分に分かってるんだけど。


「でも、機械がないと診療出来ないんだってば」

どうにかしたいけれど、こればかりは、本当にどうしようもない。


「城戸の事はどうするの?」

「別に……どうもしない」

「ふーん」

俯く私に落とされるマコの声は、何故か少し苛立ちを含んだような声で。


「昨日透に聞いたんだけど、城戸、三十一日に向こうに行くらしいよ」


三十一日……。


「見送り行く?」

「……ううん。病院あるし」

「あっそ」


そっか。

本当に行っちゃうんだね。


もっと落ち込んだりショックを受けたりするのかなーと思っていたけれど、実感が湧かないせいか大きな感情の揺れはなかった。


だけど、それでいい。

むしろ、そうじゃないと困る。


「とにかくゴハン食べちゃおう! 診察前にちょっとお昼寝したいし」


その気持ちに気が付いているのか、笑いながら話を打ち切った私に、マコはそれ以上何も言わなかった。