「えっと、紅茶でよかったかな?」
「何でもいいです」
あっそうですか。
別にいいんだけどさ。
確かに突然呼びつけたのは私だし、そもそも彼女は私の事が嫌いなワケだし。
だから、こんなツンケンとした態度を取られたって、別に気にしないけど。
相変わらずの彼女の態度に溜め息を小さく吐き出して、用意しておいたカップに紅茶を注いでテーブルに置いた。
かと言って、それに手を出してお茶を楽しむような状況ではもちろんないから。
「……」
「……」
向かい合ったまま、二人でしばらく黙り込む。
いつまでもこんな事をしてても仕方がないか……。
意を決して、先に口を開いたのは、やっぱり私。
「春希のことなんだけど」
その言葉にゆっくりと顔を上げた松元さんは、まるで睨み付けるように私を見上げる。
「松元さんは、春希の事が好き?」
色々考えた。
彼女に何を聞こうかって、たくさん考えて……。
だけど、その全てに繋がるのが、この質問のような気がしたんだ。
「春希が好き?」
もう一度同じ言葉をくり返した私に、彼女は少しだけ瞳を大きくして、一瞬その顔を歪めると、いつもの強い口調で言ったんだ。
「好きですよ」
強くて、自信ありげなこの表情が、私は苦手だった。
絶対に物事を思い通りに進めるんだという強い意志を感じるその瞳から、私は逃げ回ってばかりいた。
――でも、今は。
「そっか」
少しだけ笑った私に、松元さんが眉を寄せる。
その彼女の前に、私は静かに篠崎君から預かった書類を差し出した。
「それならどうして、春希を苦しめたりするの?」
「……」
「自分なりに頑張って考えたんだけど、どうしても分からなくて」
こんなの綺麗事なのかもしれないけど……。
「私は、自分の好きな人には幸せであってほしいと思う。だから、こんな物で春希を縛り付けている松元さんが理解できなかった」
静まり返った部屋に響いたその言葉。
それに、松元さんはグッと睨み付けるような視線を強くして、言ったんだ。
「あなたになんか、絶対に分からない。私の気持ちが、あなたみたいな人に分かるはずがない!!」
怒鳴りつけるように言葉を吐き捨てる松元さんを、私は何度か見た事があった。
だけど、こんな彼女を見るのは初めてだった。
ボロボロと涙を零しながら、目の前でしゃくり上げる彼女は、今まで見てきた彼女とは違う。

