「ふー……」
ゆっくりと息を吐き出して、通話ボタンを押す。
耳に当てた携帯からは、鳴り続ける呼び出し音しか聞こえない。
あー、そっか……。
繋がっても、出てくれない可能性もあるか。
そんな事をぼんやりと考えて、一向に出ない電話に諦めかけたその時。
「……はい」
電話の向こうから、警戒心を含んだ彼女の声が聞こえた。
「松元さん?」
「はい」
「芹沢だけど、今大丈夫?」
「……」
無言になった彼女が、今何を考えているのか。
それが分からなくて、胸がドキドキと鼓動を速め出す。
――だけど、話さないと。
篠崎君には「春希を助けてやってほしい」って言われたけれど、これは自分のためでもある。
今更向き合ったところで、あの頃の逃げ出した自分を消すことが出来ないけど、きっとこうしないと先に進めないと思った。
いつまでも昔のことを引きずって、“ああしていれば”、“こうしていれば”って、終わりのないたらればを繰り返すのは、もう嫌だから……。
「松元さん、二人で話がしたいんだけど、今から時間あるかな?」
手をギュッと握りしめて、彼女にそんな言葉をかけた。
「……分かりました」
小さな返事が聞こえたのは、私の問い掛けから数十秒経った頃。
どこで話をしようかと悩んでいたら「芹沢さんのお家に行ってもいいですか?」という、彼女の意外な声が聞こえて……。
それに「大丈夫」と返事をした私は、彼女に家の住所を教えて、タクシーを拾うと一旦家に戻ったんだ。

