犬と猫…ときどき、君



少しずつ温かくなっていく廊下を進んで、ドアノブに手をかけ、それを引く。


「おー悪い、ちょっと待ってて」

部屋に入ると、春希は困ったように考え込んで、頭をポリポリ掻いていて、クルッと見回したその部屋に、本当に小さくだけど、胸が柔らかい音を立てた。

全体的に高さのない家具で統一されたその部屋は、すごく春希らしくて……。


こういう趣味は、やっぱり自分とどこか似ていると思った。


「ねぇ、部屋ホント汚いんだけど」

でも、それを外に出すワケにはいかなくて、いつも通りの暴言を吐いた私に、春希はその顔を顰める。


「今週の休みに片付けようと思ってたんですー」

「あっそう」

「つーか、んなこと言ってるなら探すついでに片付け手伝えよ」

「えぇー……」

「テキスト返さねぇぞ」

何故か楽しそうに笑う春希の言葉は、もう意味が分からないし。


「……もういい」

仕方がないから、溜め息まじりにテーブルの上の本に手を伸ばして、それを一冊ずつ移動していく。

ファッション雑誌と車の本と、釣りの本と、インテリアの本と、時々混ざる参考書。


「城戸って、無駄に多趣味だよね」

謎の植物の育て方の本を手にしたところで、呆れながらそう言えば、

「無駄じゃねーし。つーか、お前が無趣味すぎるんだよ」

バカにしたように笑われて。


「別に、無趣味じゃないもん」

不貞腐れたら、「眉間のシワ消えなくなるぞ」ってまた笑われた。


ホントに春希はいつも通り。

おかげで私の気持ちも軽くなって……。


「おっ! 発見!」

春希がソファーの下の奥の方からテキストを見つける頃には、最初の緊張がバカらしくなるくらい、私もリラックスしていた。


「もういい加減にしてよねー。この辺すっかり片付いちゃったじゃん」

綺麗になったテーブルの上を指差して視線を上げれば、春希は「ご苦労さん」なんて、適当な返事を返してくる。


「おかげで今週の休みはゆっくり出来る」

「……」

「何だよ」

「テキスト、わざと無くしたフリしたワケじゃないよね?」

「んなワケねーだろ」


クスクス笑う春希は、本当に昔と変わらない。


春希の香りがする部屋に、春希と二人。

こうやって笑い合っていると、変な錯覚を起こしそうになる。


「ホント疲れた」

「悪かったって」

「……反省してないよね?」

「してますけどー」


まるで、昔に戻ったような、そんな錯覚を起こしそうになる。


「そーいや、今野から連絡は?」

「んーと……まだきてない」


だけどやっぱり、昔とは違んだってことは、分かってる。

頭では、分かってるんだけど――……。