薄暗い、街灯も少ない道を足早に歩く私の手には、相変わらず飾り気のない携帯電話。
「うー、やっぱり大通り通ればよかった」
今日は病院に変な電話が何回もかかってきたとミカちゃんに聞いて、一人で帰るのがすごく怖かった。
春希は用事があるのか、珍しく先に帰ってしまったし……。
だけど、こんな事のために今野先生に連絡をするのもどうかと思って。
もしかして、こういうトコロが可愛くないのかな?
こういう時に電話をするべき?
しばらくそんな事を考えて、悩んだ結果……。
“うん。一人で帰ろう”
やっぱりそんな結論に達したから、私は何かあった時のために、携帯を握りしめながら夜の道を歩いている。
最近急に冷たくなった空気に、少しだけ肩を竦めながら、静かに息を吐き出す。
それは一瞬モヤモヤと白いカタマリになって、ゆっくりとその形を変えると、最後には紺色の空に溶け込んで見えなくなった。
「寒くなったなぁー……」
それにしても、今日のあの変な電話は何だったんだろう。
ミカちゃんが言うには、男の人の声で「芹沢先生は、まだ診察中ですか?」とか「芹沢先生は、もう帰りましたか?」とか聞いた揚句、私に代わろうとするとブツリと切られてしまったらしい。
「気持ち悪いなー」
ミカちゃんも最初は「彼氏さんですかぁ?」なんて、冷やかし半分だったけど、今野先生がそんな事をわざわざするワケもない。
一瞬思い浮かんだなのは、どうやら私に好意を寄せてくれているらしい浜田さん。
でも、今まではそんな事なかったし。
「……まぁいっか」
何だかモヤッとして確かに気持ちが悪いけれど、考えたところで、きっとそれが誰かなんて分からないし。
だいたい、こんな暗い道でそれを考えること自体が間違いで……。
「あーもー……。やっぱり怖いよー」
恐怖を誤魔化すようにそんな言葉を口にして、手に持った携帯を握りしめた時だった。
「……」
人がいる。
ボソボソと聞こえる話し声に気付いた私は、歩くスピードを少しだけ緩めた。
もう少し歩くと、そこには寂れた公園があって、その出入り口付近に大きな車が停めてあるのが見てる。
それだけでも何だか嫌な感じなのに、少し離れた暗闇の中、かろうじて見える人影はどうやら男の人っぽい。
「……どうしよう」
こんな風に、勝手に恐怖を覚えるなんて、本当に自意識過剰なのかもしれないけれど……。
ドクドクと、心臓の動きが速まって、手に握りしめたままの携帯を、もう一度ギュッと握った。

