こっちがいくら必死に話したって、それが伝わらない人間なんて腐るほどいる。
でも、“もしかしたら……”なんて思う気持ちが、どっかにあったんだけど。
「私は別れないから!! 芹沢さんが他の人と付き合ってるなら、このままでいいでしょ!?」
――もうさ、やめにしようよ。
「んー、でも俺いなくなっちゃうし」
「……え?」
「アンタからどっかに漏れる事はないだろうから言っちゃうけど、俺、留学するんだわ」
「そんなの聞いてない!!」
「おー、まだ篠崎くらいにしか言ってないからな」
「どうして!?」
――“どうして”か。
「強いて言うなら……疲れたから」
笑いながら最後に零した俺の本音に、少しだけ表情を曇らせた松元サンは、それから口を閉ざして、喋らなくなった。
「いついなくなるんですか……?」
家に帰す為に呼んだタクシーに乗り込んだ時、ポツリとそんな言葉を口にする。
「病院の事もあるし、まだ決めてないけど、半年以内には」
それまでの勢いがすっかりなくなったその声に、少し驚きながら答えると、また下を向いて少し考え込んだ。
「あの……っ」
そのまま何か言いたげに俺を見上げたけど……。
「何?」
「……いえ。何でもないです」
結局なにを口にするでもなく、運転手に行先を告げて走り去ったんだ。
「はぁー……」
一人その場に取り残された俺は、公園のフェンスに寄りかかってボーっと空を見上げる。
何かもー、頭の中はゴチャゴチャだし、さっきので別れられたとも思えねーし。
胡桃には……また最悪なところを見られたし。

