まだ肌寒い、北国の春。
だけど、こんな風にくっついていたら凄く温かい。
「温かいね」
「おー。おかげで離れらんねぇな」
相変わらずムードも無く、抱き合ったままクスクスと笑い合っていた。
だけど。
「……あれ?」
「ん? どうしたの?」
「携帯、鳴ってねー?」
「あ、ホントだ!」
「……」
「……」
「離れろよ!」
ポケットの中の私の携帯が小さく震えているけれど、この心地いい腕の中から抜け出したくない。
城戸春希は、そんな私を笑いながらベリベリと引き剥がす。
もうちょっと、あの腕の中でポカポカしていたかったのに……。
「どうせもう切れちゃったもん」
唇を少し尖らせて、ポケットから取り出した携帯電話。
【不在着信 及川 聡】
開いた液晶に表示されていたのは、そんな文字だった。
「聡君だ」
「……」
「えっ!? ちょっと!?」
突然、手からパッと取り上げられた携帯。
それをパタンと閉じると、さっきまでそれを握っていた私の手を、城戸春希が何故かギュッと握って、一瞬考えるように上を向き大きな溜め息を一つ吐き出す。
なに……ごと?
いまいち状況が理解出来ないでいる私を見下ろすと、取り上げた携帯をスッと私に差し出し、
「かけ直す?」
ちょっと首と傾げながら、そう口にした。
聡君はいつも本当に用事がある時は、何度かかけ直してくる人。
だから、再び電話がかかってこないという事は、大した用事じゃないはず。
それに今は、二人でいる時間を邪魔されたくない――なんて、聡君にはちょっと申し訳ない事を思ってしまう。
それくらい、私は城戸春希に知らぬ間に惹かれていたらしい。

