「ドキドキは、してる」
真っ黒な瞳を見上げた私に、フッと口元を緩めた城戸春希は、抱きしめる腕にギュッと力を込めて。
あの日、電話越しに聞いた声と同じ、柔かい声で言ったんだ。
「俺もだよ」
その声に、胸がギュッと締めつけられて、
「懐いてもいいの?」
いつもだったら、絶対に口にする事が出来ないような、そんな言葉を口にさせる。
「お前、ネコみてぇ」
「ネコ?」
オウム返しをして首を傾げる私を見た城戸春希は、
「思う存分、懐けばいいんじゃねぇの?」
私の頭をポンポンと撫でると、そう言って何やら楽しそうに笑っていた。
ずっと、人に心を開くのが苦手だった。
自分の気持ちを上手く伝えられなくて、いつも誤解されてばっかりだった。
ホントは淋しくて、だけどそれさえも口に出せなくて……。
けれど、この人は特別だと思った。
まだ幼くて何も知らなかった私は、これが“運命”ってやつなのかもしれないなんて――本気でそう思っていたんだ。

