「だから、胡桃は悪くない」
「……ごめん」
「お前、今日謝ってばっかだな」
「誰のせいだよ」
「知らねーよ。自分じゃねぇの?」
もしも今日、篠崎とこうして話をしていなかったら、きっと俺はこんな風に笑えていなかったはず。
「今野なら、胡桃のことをちゃんと理解してくれると思う」
「……じゃー、あの女とも別れんの?」
「そうだな。病院のこと横山先生に相談してからだけど」
すっかり冷めてしまった唐揚げに箸を伸ばした俺を、じっと見つめる篠崎は相変わらず顔を顰めたまま。
「ハルキはどうするんだよ」
俺を心配する、そんな言葉を口にした。
「んー……海外逃亡でも企てようかな」
「は? 留学ってこと?」
「まだ分かんねぇけど。散々カッコつけておいてなんなんだけどさ……。正直、結構キツいんだよ」
胡桃には幸せになってもらいたいって、心底思うのに。
「なんでこんなに好きなんだろうなぁ」
例えばこれが、逃げることになったとしても。
今野の隣にいる胡桃を見ても平気でいられるようになるのには、まだしばらく時間がかかりそうなんだよ。
「お前ら、ホントにそれでいいの?」
「……」
「やっぱりよく分かんねーよ」
「俺もよく分かんねぇよ」
でもさ……。
もしも十年後とか、二十年後に、今野の隣で幸せそうに笑ってる胡桃を見る事が出来たら。
きっと“あれでよかった”って、そう思えると思うんだ――……。

