「で? ハルキが泣いてた理由は?」
いや、泣いてねぇしな。
まぁどっちでもいいんだけど。
「こないだの話、まだ有効か?」
「へ?」
「アニテクの引き受け先になってくれるってやつ」
少し笑ってそう尋ねた俺を、真顔で真っ直ぐ見据えた篠崎は、僅かに顔を歪める。
「それって、もうハルキが限界ってこと?」
“限界”……か。
あながち間違えていない気もするけど。
「いや、胡桃が――」
少し早すぎたかな。
まだこれを口にするのには、胸が痛む。
だけど。
「今野と付き合ってるんだと」
「……え? 司ちゃん?」
それを受け入れていくには、こうして口に出して、自分に言い聞かせるのもいいのかもしれない。
「何で司ちゃん? そういえば、沖縄でも芹沢と司ちゃん喋ってたよな?」
てっきり椎名に胡桃と今野の関係を聞いていると思っていた篠崎は、何も知らなかったらしく、心底驚いた様子で、その大きな目をますます大きく見開いた。
「俺が紹介したから」
「は?」
「俺が、今野に胡桃を紹介したから」
自棄になったワケじゃないけど、まるで吐き捨てるように口をついて出てしまったその言葉。
篠崎からは、てっきり“そっか”とか、そんな返事が返ってくるものだと思っていたのに……。
「お前、バカか?」
ほとんど聞くことのない篠崎の低い声に、言葉に詰まってしまった。
「何してんだよ!! 何でそんなことすんだよ!!」
「……」
「芹沢のこと好きなんだろ!? だったら、なんで自分苦しめるようなことすんだよ、なぁ!?」
「篠崎、落ち着け」
「なんで司ちゃんなんだよ!! ハルキもハルキだけど、芹沢も……」
「篠崎!!」
「……っ」
思わず荒げてしまった声に、ざわついていた店内が一瞬静まり返る。
「俺のエゴなんだ」
篠崎は唇を噛みしめながら、目の前でポツリと口にした俺の言葉にゆっくりと顔を上げる。
「……どーゆーこと?」
「今野だったら、胡桃のことを傷つけたりしないって。知らないの男に胡桃を取られるくらいなら、今野みたいな奴がいいって、そう思った」
ホントに汚くて、バカみたいなエゴ。

