犬と猫…ときどき、君


「ごめん」

「……何がだよ」

「やっぱ俺のせいだよ」

「だから、違がうっつーの」


もう幾度となく繰り返してきたこの会話に、俺は呆れながら溜め息を吐く。


「確かにお前のミスもあるのかもしれないけど、それに巻き込む原因を作ったのは俺だろ? 何回も言わせんな。あれは俺の責任だ」


笑いながらグラスに手を伸ばした俺に、まだ何か言いたげに口を開きかけた篠崎は、きっともう何を言っても無駄だと分かっているんだろう。


「あーもー!! ハルキのばーか!!」

「あぁ!?」

「何なんだよもー……」

「……」

「なんでそんなに大人になれるんだよ」


思いっきり暴言を吐いたくせに、だんだん尻すぼみになった篠崎は、ガシガシと頭を掻きむしった後、項垂れてポツリとそう口にした。


“大人”?

俺は、全然大人なんかじゃない。


俺がもっときちんとした大人だったら、きっともっと上手く立ち回る事が出来るはず。

これは、大人どうこうの問題じゃなくて、ただ篠崎がどれだけ自分を責めているかを知っているから。


「まぁ、お前よりは大人だな」

「はぁ~ん!?」


それに、こいつは誰よりも俺を心配していて、何より俺にとって“親友”と言える存在だから。

だから尚更、篠崎が悪いとも思わないし、責める気なんか毛頭ない。


「で? なに話したんだ?」

「あの契約書の内容聞かれて……。あと、いつからあの状態なのかとか。ハルキの事は聞かれなかったけど……」

「多分、感づいてるだろうな」

「俺もそう思う」


本当の意味で頭のいいあの人が、気付かないはずがない。


「ごめん。俺なりに誤魔化そうとしたんだけど」

「お前ウソ下手だしな」

「……ゴメンナサイ」

「ばーか。冗談だよ」


デカい病院のお坊ちゃんって、もっと嫌なヤツのイメージだったけど、篠崎は本当に素直な奴なんだ。


「及川さんはバカじゃないから、悪いようには動かないだろ。取り合えず、そっちは様子見だな」

「分かったー……」


歯切れ悪く返事をした篠崎は、叱られた仔犬みたいに項垂れて。

すっかり冷めてしまった焼酎のお湯割りに手を伸ばし、それをズズズッとすすると、ゆっくりとその視線を上げた。