犬と猫…ときどき、君


「お前観ねーの?」

「サッカーよく分かんないし」

「相変わらず非国民だな」


相変わらず、か。

“クククッ”と楽しそうに笑って、春希が何気なく口にしたその言葉に反応してしまう私って、本当にどうなんだろう。


――昔も、こんな事がよくあったんだ。

サッカーのある日、春希はいつもお菓子やお酒を大量に買い込んで、それを広げてテレビの前で一人、子供みたいにはしゃいでいて。

そんな彼の様子を遠くから眺めながら「子供!?」ってバカにする私に、いっつも「非国民」だの「信じらんねぇ」だの、春希は散々文句を言っていた。


最終的には、人のことをテレビの前まで引っ張って行って、無理やり一緒に観戦させたりしてさ。


「非国民で結構です」

「つまんねぇのー」


また昔を想い出して、少し自分を責めて……。

それと同時に頭に浮かんだのは、今野先生の事。


今だったら、言えるかもしれない。


ドクンドクンと、その音を大きくする心臓に、両手をギュッと握りしめる。


「城戸」

これを言ったら、もう元には戻れない。


「あー?」

優しい城戸は、絶対に友達を裏切ったりはしないから。


「あのね、私……」

きっと、その黒い瞳を少し細めて、笑いながら言うんだ。

“そっか、よかったな”って――……。


「私、」

息を呑んで、必死に絞り出した声。

それをかき消すように、テレビのスピーカーから大きな歓声が聞こえた、丁度その時だった。


「……えっ!? なに!?」

音もなく、フッと消えた院内の電気。


「ちょっと、ねぇ……城戸!?」

「おー、ここにいる」

慌ててその名前を呼べば、すぐに返事が返ってきて、ホッとして、それと同時に、思ったよりも近いところから聞こえた声に鼓動が速まる。


「停電だな。外も真っ暗」

暗闇に少し慣れた目に映ったのは、窓の外に視線を向ける春希の横顔。


「ホントだ……」

言われてみれば、さっきまで点いていた街灯も、ビルの窓の灯りも全部消えていて……。

どれだけの範囲での停電かは分からないけれど、もしも広範囲だったら、電車だって止まっているかもしれない。