結局倉庫には行けないまま表に戻った私は、みんなを帰えらせると、一人待合室にある受付に向かった。
だけど、もちろんそこには誰もいない。
「……ホント、すごい雨」
待合の大きな窓には、さっきから弱まる事のない大粒の雨が打ち付けられていて、その先に見える道路には、すごい量の水が流れている。
ホントに電車止まったら大変だなぁ。
私はギリギリ徒歩圏内だけど、こんな日に歩いて帰りたくないし……。
頬杖を付きながら、ボーっと外の様子を眺めていると、背後からカタンという小さな音が聞こえて振り返った。
「これからもっと荒れるらしいぞ」
「そうなんだ。病院雨で潰されちゃったらどうしよ」
「それは困るなぁ」
くだらない返事に、更にどうでも良さげな返事をして、春希が私にコーヒーの入ったカップを差し出す。
「ありがと」
「いいえー」
そのまま私が座る隣の椅子に腰を掛けるから、少しだけ心臓の音が大きくなった。
「……」
「……」
別にいいんだけどさ。
いいんだけど、この距離間で会話がないのは少し辛い。
待合にはテレビもあるんだけど、人がいないから電源は切ったままにしてあって……。
それを点けに行くのも、わざとらしすぎるよね?
うーん……。
頭を抱え込んでしまいたくなるこの状況に、春希も同じことを考えていたのか。
「今日サッカーやってんじゃねーの?」
そう言って立ち上がると、受付のカウンターの向こうに回り、テレビを点けた。
「おー、やっぱやってた」
そんな声と共に、静まり返っていた待合室に大きな歓声が広がる。
「宮崎、相変わらずすげぇなー。二得点か」
独り言なのか、私に話しかけているのか……。
よく分からないけど、さっきよりは呼吸がしやすくなったこの状況にホッとした。

