「この先」
あれから、テクテクと歩くこと十分。
気が付けば、街灯もすっかりなくなった牧草地に囲まれたその場所で、いったん足を止めた城戸春希が、その更に先に真っ直ぐ伸びる道を指差した。
「……」
「ん? どした?」
「真っ暗だよ?」
「おー。……あ」
「え?」
「もしや、怖い?」
そう言ってニヤリと笑って、私の顔の目の前にスッとその顔を近づけるから、つい顔を背けてしまう。
「……」
「……」
下を向いた私と、そんな私を多分見おろし続けている、城戸春希。
どう……すればいい?
多分、顔も赤いし。
でも暗いから平気かな?
恐る恐る視線を上げると、そこには、明らかに“しょうがねぇなー”という表情を浮かべる彼の顔があった。
思ったよりも近かった彼との距離に、胸がトクントクンとその鼓動を速め出す。
「ちょっとだけ、怖い」
――丸二年。
もうずっと変わる事のなかったこの関係は、私が起こすほんの小さな刺激によって変わる事はあるのかな?
見上げたその瞳は、あまりに真っ直ぐで、この夜空と同じくらい深い黒だ。
「……っ」
繋がれた綺麗なその指先をギュッと握った瞬間、あなたの瞳が少しだけ揺れて息を呑んだのがわかった。
そんな顔されたら、困っちゃうよ……。
目の前の城戸春希は、いつもの飄々とした表情を引っ込めて、真面目な顔で私を見据えている。
「ごめん」
心の中を見透かすような瞳に、思わず視線を逸らして繋いだ手を引っ込めた。
――それなのに。
フッとと笑った城戸春希が、私の手をもう一度握り直す。
「……っ」
「行こ。もう少し!」
そのまま前を向くと、今度は私の横に並ぶように、ゆっくりと歩き出したんだ。

