「胡桃――」
「春希」
それまでこぼしていた涙を、拭った胡桃の、俺の声を遮って口にされた感情を抑え込んだようなその声に、鳥肌が立った。
「もう、全部終わらせたいの」
「……」
「春希は、松元さんが好き?」
“好き”?
俺が、あの女のことを……?
胡桃の真っ直ぐなその視線に、言葉に詰まって、何も言えなくなる。
そんな俺を見て、胡桃は何かを決心したように一度大きく息を吐き出して……言ったんだ。
「私のこと、振って欲しいの」
「――……っ」
「こんなことを春希に頼むのはおかしいって、分かってる。だけど……」
なぁ、胡桃。
「このままじゃ、もうただの同僚にも戻れない」
もしも俺が……
「だから、お願い。私のことを、振ってて欲しい」
胡桃のことが好きだって、そう言ったら。
お前はどう思う?
「胡桃」
「……え?」
その愛しい名前を呼んで、もう一度自分の腕の中に、その体を閉じ込めて……。
「好きだ」
「――……っ」
ギュッと強くその体を抱きしめ、首筋に顔をうずめれば、鼻をくすぐる、昔と変わらない胡桃の香り。
溢れ出した気持ちは、もう止める事なんかできなくて。
「胡桃が好きだ……っ」
あんな女じゃなくて、俺はずっとずっと、胡桃が好きなんだ。

