次の日の朝、家を出る瞬間、目に留まったのは、テーブルに置きっぱなしにしていた小さな箱。
一瞬躊躇って、それにゆっくりと手を伸ばし、カバンの中に忍ばせた。
玄関を出ると、空が真っ青で……。
こんないい天気なのに、胸が押し潰されそうになる。
晴れた日は、好きじゃない。
強い光と、朝の冷たい空気に、こめかみの辺りがズキリと痛んだ。
図書館の大きな窓から見た真っ青な空と、あの女の甘い香水の香り。
「……っ」
あの日から、晴れた空を見る度に思い出すのは、そんな最悪の情景。
時々起る偏頭痛の原因は、いたって単純。
人差し指でこめかみの辺りをグリグリ押した俺は、長く息を吐き出し、車に乗り込んで病院に向かった。

