「ごめんね。“頑張るから待って”とか、偉そうに言ったくせに」
「ホントだよ」
「ねー……。でも話したら、ちょっと楽になった。ありがとう」
「いいえー」
笑いながら、中身がすっかり空になったマグとグラスを流しに持っていくマコは、多分ちょっと照れている。
「今日、泊まって行こうかなぁ」
「はぁー? そうゆーのって、普通私が“泊まって行ったら?”とか言うもんじゃないの?」
「まーまー。いいじゃん! お風呂入るから、何か着替え貸してー!」
結局その日は、私よりも背が10センチ以上も小さいマコのツンツルテンのスウェットを借りて、一緒のベッドに潜り込んで、“狭いっ!!”なんて文句を言う彼女の隣で眠った。
「マコがいてくれて、本当によかった」
「何、急に」
――だって、そうじゃなかったら……。
私はきっと、こんな風に泣くのを我慢出来なかったから。
目を閉じると浮かぶのは、城戸の悲しそうな笑顔。
頭の中で何度も何度も、城戸の言葉が繰り返される。
“俺達少し、距離を置いた方がいいのかもな……。”
ねぇ、城戸。
それが城戸が出した答えなんだよね?
いつまでも城戸に甘え続ける私に、嫌気がさした?
それとも……松元さんの為、かな?
でもさ、それだったら、どうして私にあんな綺麗なプレゼントをくれたの?
薄暗い部屋の中でゆっくり瞳を開けば、そこにはサイドテーブルのライトの下に置かれた、携帯に付けられずにいる、ストラップ。
柔かい灯りに照らされたソレに、胸がズキンと痛む。
いつになったら私の胸は、城戸との事で、こんな風に痛まなくなるんだろう?
それはやっぱり、城戸との過去を全部忘れた時?
「……」
――そうだとしたら、私は……。

