犬と猫…ときどき、君


「ごめんマコ」

「……」

「やっぱり、よく分かんないや」

「はぁー……」

「もういいわ」と立ち上がると、マコは冷蔵庫からお茶を取り出して、コップにコポコポと注いだ。


「にしたって、城戸もホンッット意味わかんないよね」

「……うん」

「コレ、そんなホイホイ人にあげられるような安もんじゃないと思うよー?」


私も、そう思う。

だって、見た目の繊細さも、手触りも、何だか安物とは思えない感じなんだもん。


城戸から貰ったストラップが入っていた箱を、手の上でコロコロと転がしながら観察していたマコが、私の手からストラップをスッと抜き取る。

それを、細めた目の前に持って行って、じーっと観察。


「やっぱり。コレ、プラチナだよ」

怪訝な顔でそれを眺めていた私に、そんな信じがたい言葉を口にした。


「えぇっ!? ウソでしょ!?」

慌ててそれをマコの手から奪い取って、同じように目を凝らす。


「――ホントだ」

そこには小さく、“Pt950”の文字。


「プラチナ、95%のお品でございますわねー。こんなの、宝石屋じゃないと買えないっつーの」


宝石屋さん……。


「ねぇマコ?」

「んー?」

「城戸はどうして、こんなのくれたのかな?」

「……」

「え?」


質問への返事が返ってこないから、どうしたのかと顔を上げると、マコはなぜか不機嫌そうな顔で頬杖を付いていた。


「……知らない。城戸に聞けばー?」

「聞けないから、マコに聞いてんじゃん」

「だから、私は何回も言ってるでしょー!?」

「なんて?」

「城戸は胡桃の事好きなんじゃないのーって!!」

「……それは、ないよ」


私の答えに、心の底からゲンナリ顔をしたマコは「ホラ、どうせ言っても聞かないじゃん」と、ますます不機嫌になって、コップのお茶を一気に飲み干す。


「だって、じゃー松元さんは?」

「知りません」

「“付き合ってる”って言ってたよ?」

「知らないってば」

「もー!! マコー!!」

すがるように腕を掴んで、その身体をユサユサ揺すったけど、効果は全くなし。


「てかさぁー」

「ん?」

「沖縄、行くんでしょ?」

「……うん」

「あの女は?」

「分かんない」

「城戸とは? 距離置くの?」

「……分かんない」

「……」


こんなんじゃ、マコだって何も言いようがないよね。


マコは基本的に言いたい事はガツガツ言うけど、それでも、自分の意見は自分の意見として口にして、本気でそれを相手に押し付けようとはしない。