――それなのに。
「胡桃!!」
腕を城戸に掴まれて。
ヤダ。
「お願い、離して……」
もうヤダ。
「もう嫌なの……っ!!」
こんな風に、今野先生を振り回してしまった自分も、
「イヤ……っ」
「……」
私をもう一度その腕の中に閉じ込めた城戸の温もりに、どこかホッとしてしまっている自分も。
「もう……嫌だ」
大嫌い。
こんなにも弱い自分が、大嫌い。
「お願い……離して……」
「胡桃」
「ふ……っ」
噛んだ唇の隙間から零れる、震える息。
それを聞いて、ゆっくりと私をその腕の中から解放した城戸が、静かに口を開いた。
「胡桃」
「……」
「今野が好き?」
「え……?」
突然の城戸のその言葉に驚いて、俯いていた顔を上げる。
目の前には、涙をボロボロ零す、私の酷い顔が映った城戸の瞳。
「今野のこと、好きになった?」
もう一度そう口にした城戸は、何故かフッと、まるで何かを諦めたように自嘲的に笑った。
その表情に、胸の辺りがスーッと冷たくなって、息苦しさに顔を歪める。
そんな私の目の前の机の上に、城戸がポケットから取り出した何かを置いた。
ちょうど、今野先生が置いて行った……小さな箱の隣に。

