犬と猫…ときどき、君


ゆっくりと待合室を見渡すと、そこには顔見知りのオーナーさん達。


だけど、その中に混ざるその人物を視界に捉えた瞬間、息を飲んで、その場に立ち尽くした。


どうして彼女がここに……?

ドクドクと、急に激しくなった心臓の動きに、呼吸が上手く出来ない。


何が起きているのか、イマイチ把握しきれていない私の目の前に、ツカツカと歩み寄ったその人は、

「最っ低!!」

そんな言葉と共に、スッと上げた手を私の頬めがけて、思い切り振り下ろしたんだ。


“殴られる……っ!!”

そう思うのとほぼ同時に、耳に届いたオーナーさん達の驚きを含んだ小さな悲鳴。


そして……。


「――つっ!!」

頬に走った痛みが、一瞬でジンジンと熱を持つ。


「な、何するんですか!!」

ハッとしたように、慌てて私の元に駆け寄ったサチちゃんが、呆然とする私の瞳の端に映る。


そんなサチちゃんに視線を向ける事なく、私を睨み続ける目の前のその人は……。


「何であんたがハルキさんの誕生日祝ってんのよ!?」

「松元さん……」


あの旅行のパンフレットを渡しに来た日以来に見る、松元さんだった。


「どうせ仕事とか言って、引き止めてたんでしょう!?」

「松元さん、違う」

「何が違うの!?」

「ちゃんと話すから、少し落ち着こう? ここだとみんな驚くから、裏に行こっか」

興奮状態の彼女に、出来るだけ静かにそう話しかけてみたけれど。


「ここで話してよ!! それとも、みんなに知られたら困る事でもあるの!?」

そっと肩に触れた私の手は、凄い勢いで振り払われてしまう。


――どうしよう。

何事かと、ざわつき始める待合室。


「何とか言ったら!?」

本当は、みんながいない所できちんと話がしたい……。

だけど松元さんは、納得するまでここを離れそうにもない。


「松元さん。きちんと話すから、聞いて?」

こうなったら仕方がない。

私はここで話すしかないと腹を括って、ゆっくり息を吐き出したあと、その目をしっかり見据えた。