犬と猫…ときどき、君


俯く私の頭上から聞こえた、城戸の溜め息ともとれる長い息に、私はギュッと目を閉じた。


こんな風に泣くなんて、城戸を困らせるだけ――そう思うのに、なかなか涙は止まらなくて……。

そんな私の頭をそっと撫でた、城戸の温かい手。


「ごめん、冗談」

その言葉が耳に届くのと同時に、ふわりと揺れた空気と、小さな炎。

目の前で、さっきまで柔かい光を放っていたロウソクが、フッと吹き消された。


ゆっくりと顔を上げると、目の前にあったのは、私を真っ直ぐ見据える城戸の瞳。


「……」

私の頭から、力なくダラリと滑り落ちた城戸の指先が、髪をさらりと揺らす。


そしてそのまま――

「泣かれると、きつい」

顔を僅かに歪めた城戸は、指をギュッと握りしめ、その綺麗な瞳を私から逸らして俯いてしまった。


そうだよね。

ごめんね、城戸。

困らせてごめん……。


彼女がいるのに、元カノにメソメソ泣きつかれて、優しい城戸は、そんな私を突き放したりなんか出来るはずがないもん。


「ごめん! もう大丈夫!」

「……」

「私、デンちゃん診てくるね!」

涙を拭って立ち上がった私に向けられる城戸の瞳に、心がまた揺れてしまう。


「明日遅番だし、やっぱり今日は私が泊まるから、ケーキ持って帰って食べて」

「芹沢」

無理やり作った笑顔を城戸に向けた私は、まるで逃げるように、城戸の言葉の終わりを待たず、足早に医局を後にした。