城戸と付き合っていたあの頃、二人の誕生日の間を取って、毎年九月九日にこうしてお祝いをしていた。
私は音痴で、知らぬ間にマイナーコードを歌っちゃうタイプで……。
バカにする城戸に負けじと、毎年挫けずバースデーソングを歌い続けた。
「歌えない」
歌えるワケないじゃん。
「あっそ」
「いいから……早くロウソク消してよ」
「じゃーさ」
目の前の城戸の瞳に、心臓の鼓動がドクンと音を立てる。
「芹沢も一緒に消そ。願い事、すんだろ?」
「……っ」
お願いだから、そんな事いちいち覚えてないで忘れてよ。
“ロウソク消しながら、願い事するんだよ!”
“あーっ! 待ってね!! まだ決まってないから!!”
なかなか願い事が決まらない私を見て、“欲張ってんじゃねーよ”って、城戸は笑って……。
だけどいつも――……。
「待っててやるから、ロウソクなくなる前に決めろよー?」
「……っ」
そうなんだ。
そう言って頬杖を付きながら、その綺麗な瞳を細めて、私を愛しそうに見つめるんだ。
昔と全然変わらないその瞳に、息が苦しくなって眩暈を覚える。
「決まった?」
忘れたいのに。
「……」
“忘れたい”?
私は本当に、忘れたいって思ってる?
わからないけど……。
「芹沢?」
「ごめん」
「……何で泣くんだよ」
だって、苦しいから。
胸が痛くて……苦しいからだよ、城戸。

